「死んだら空の星になりたい」という願いは、現実のものとなりました。
亡くなった後、憧れの宇宙で最後のときを迎える「宇宙葬」は、1990年代にアメリカで実現され、すでに何百人分もの遺骨や遺灰が宇宙へ旅立っています。
宇宙葬とは、「遺骨・遺灰」を宇宙空間に運ぶ、新しいタイプの埋葬・供養の方法です。
従来の火葬や土葬とは異なるので、自然葬の一種と言えるでしょう。
宇宙葬とは一体どのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう!
いろいろな種類の宇宙葬
宇宙葬と一言でいっても、実はいろいろな種類があります。
宇宙に運ぶ手段や目的地、実施されるまでに必要な期間や、費用もさまざま。日本国内で実施可能なものもありますが、ロケットで宇宙へ行く場合などは、海外の企業が提供するプランを利用することになります。
宇宙葬はまだ始まったばかりなので、今後さらに内容が充実し、より幅広いサービスが提供されるようになるでしょう。
現在、実現可能な宇宙葬には、次のようなものがあります。
【バルーン葬】
バルーンで遺灰を成層圏まで運び、散骨する
【人工衛星プラン(流れ星供養)】
遺灰を人工衛星に搭載して宇宙空間に運び、軌道上を周回したのち大気圏に突入して流れ星になる
【宇宙旅行プラン】
遺骨や遺灰をロケットで宇宙空間に運び、散骨する
【宇宙探検プラン(ロケット探索)】
遺骨や遺灰を載せたロケットが、宇宙空間を移動し続ける
【月旅行プラン(月面葬・月面供養)】
遺骨や遺灰をロケットで月まで運び、月面に安置する
手段・目的地から見る「いろいろな種類の宇宙葬」
宇宙葬にはいろいろな種類があるので、どれを選べばよいか迷ってしまいますよね。
宇宙葬を次の3つのポイントで分類することで、どの宇宙葬が自分のニーズにあっているかを見極めることができます。
宇宙葬の手段や目的について詳しく見ていきましょう。
① どうやって行くのか?
② どこまで行くのか?
③ 最後はどうなるのか?
① どうやって行くのか?(宇宙へ運ぶ方法)
遺灰や遺骨を宇宙へ運ぶには、ロケット、人工衛星、バルーンという3つの方法があります。
▶費用の違い
ロケットで行く方法が最も高額で、その次が、人工衛星に載せてロケットで宇宙へ運ぶ方法。
バルーンを使った宇宙葬は最も費用が安くなります。
▶実施の条件
バルーンによる宇宙葬は、国内のさまざまな地域から実施可能で、条件が整えばすぐに行うことができます。
しかし、人工衛星やロケットによる宇宙葬の場合は、予定された打ち上げのスケジュールに合わせて実施されます。場合によっては、長期間待たされることもありますし、ほとんどの場合、海外での打ち上げになります。
② どこまで行くのか?(目的地)
遺骨・遺灰は宇宙のどこまで行くのでしょうか? 宇宙葬の目的地は、どうやって宇宙へ行くかによって異なります。
▶バルーンの場合
バルーンによる宇宙葬では、宇宙空間までたどり着きません。
大気圏の内側の成層圏(高度およそ30~50km)で、遺灰の入ったカプセルを散骨します。
▶人工衛星の場合
人工衛星に搭載する宇宙葬の場合、宇宙空間に到達し、しばらくの間、軌道上を周回し続けます。
周回する期間はプランによって異なり、長いものでは最長240年間、短いものでは数日、あるいは数カ月~数年間となっています。条件が良ければ、周回する人工衛星を地球上から見ることができます。
周回期間が終わると、遺灰・遺骨は人工衛星と共に大気圏に突入し、流れ星になります。
▶ロケットの場合
ロケットで行く宇宙葬の場合、目的地はさまざまです。
主なものとしては、遺骨や遺灰の入ったカプセルを宇宙空間に散骨する、宇宙旅行プランがあります。
月へ向かうプラン(月面葬・月面供養とも呼ばれる)では、遺骨や遺灰を月面に安置します。
宇宙探索プランでは、ロケットと共に宇宙空間を移動しどこまでも探索を続けます。
③ 最後はどうなるのか?
宇宙に運ばれた遺灰や遺骨は主に、次の4パターンの最後を迎えます。
大気中に消える | バルーン |
大気圏に突入して流れ星になる | 人工衛星 |
宇宙空間に消える | ロケット |
月面に安置される | ロケット |
ロケットと共に宇宙空間を移動し続ける | ロケット |
宇宙葬の費用相場「意外と安い?」
宇宙で散骨や供養をするためには、かなり高額な費用がかかりそうですよね。
実は、宇宙葬は最も安いものなら、30万円~数十万円で実現可能なのです。
ただし、宇宙葬の費用は、プランの内容、サービスを提供する企業、オプションサービスの内容などによって異なります。
おおよその費用相場としては、バルーン葬が最も安く、およそ25万~30万円。
人工衛星プラン(流れ星供養)は提供する企業によって幅があり、およそ30万~100万円。
宇宙空間で散骨をする宇宙旅行プランは、およそ50万円。
宇宙探検プラン(ロケット探索)や月旅行プラン(月面葬・月面供養)は、250万円以上となっています。
注意点としては、宇宙葬では運べる遺骨・遺灰の量が限られるため、遺骨や遺灰の大部分は別途埋葬しなければならないということがあげられます。
通常の埋葬や別の自然葬などと併用する必要があるので、宇宙葬自体の費用のほかにも埋葬のためのお金がかかることを理解しておきましょう。
今後、宇宙葬がより多くの人に利用されるようになれば、もっと安い料金で、気軽に宇宙で供養ができるようになるかもしれませんね。
宇宙葬には立ち会える?
宇宙葬では、打ち上げの瞬間に立ち会うことができます。
国内で実施可能なバルーン葬なら、親族や友人などで集まって、一緒に打ち上げを見送ることができます。
海外で行われるロケットによる宇宙葬の場合も、打ち上げに立ち会うことが可能です。ただし、渡航費用や滞在費が別途必要になります。
立ち合いが難しい場合でも、企業によっては、動画で打ち上げの様子を見ることができるサービスを提供しています。
打ち上げに合わせてセレモニーが行われるケースもあるようです。
人工衛星に搭載する宇宙葬では、軌道上を一定期間周回したあと、大気圏に突入して流れ星になります。
大気圏に突入する瞬間がいつになるかは明確ではないため、流れ星が流れる瞬間を見届けることは難しいかもしれません。
宇宙葬の問題点とは?
宇宙空間や成層圏の大気中に遺骨や遺灰を散骨することは、違法ではないのでしょうか?
この点について、実は日本の法律には明確なルールがありません。
埋葬に関しては、許可された場所以外での土葬が禁止、埋葬地として許可されていない場所に遺骨を埋葬したり放置することは違法。という2点が定められているだけなのです。
したがって、遺灰や粉骨した遺骨を散骨すること、宇宙空間に遺骨を散骨することについては禁止されていません。
すでに、実際に国内外で宇宙葬を実施した方もいるので、宇宙葬を行うこと自体は現時点で法律違反ではなく、現在のところ問題はないと考えられているようです。
まとめ
世界から熱い注目を集めている「宇宙葬」をご紹介しました。
人が宇宙へ行くことが当たり前の時代が近づいています。宇宙で散骨、宇宙で供養を行う方法も、近い将来、より身近なものになっていくかもしれませんね。