【世界の埋葬】ヒューマンコンポスティング(遺体の堆肥化)は最高にエコ!

手をつなぐ人と育つ新芽の画像

ヒューマンコンポスティング(堆肥葬)は、人間の遺体を土葬や火葬するのではなく、そのまま堆肥にして自然に還すという、最高にエコな埋葬方法です。

土に還る埋葬といえば、火葬した遺骨を土に埋める「樹木葬」が有名ですが、ヒューマンコンポスティングでは、火葬を行いません。
遺体をそっくりそのまま堆肥に変えることができるので、火葬の必要がないのです。

ヒューマンコンポスティングこそまさに、本当の意味での自然葬(自然の中で眠り、土に還る)と言えるかもしれませんね。

しかし残念ながら、これは日本の話ではありません。2020年にアメリカのワシントン州で認可されたばかりの、新しい埋葬方法なのです。

それでは、アメリカで注目の新たな埋葬方法「ヒューマンコンポスティング」について、詳しく見ていきましょう!

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ヒューマンコンポスティングとは?

手で土をすくう画像

ヒューマンコンポスティングは、アメリカで行われている埋葬方法で、自然葬の一種です。

堆肥葬、あるいは、有機還元葬(ゆうきかんげんそう)とも呼ばれます。

有機還元の正式名称は、「natural organic reduction(自然有機分解または、自然有機還元)」です。

ヒューマンコンポスティングでは、遺体を土に埋めるのではなく、専用の容器を使って自然有機分解を行います。
容器は木材チップなどで満たされており、その中に埋められた遺体はバクテリアや菌類の働きで、およそ6~8週間で完全に分解されます。

もちろん、ペースメーカーやインプラントなど、分解されないものは途中の工程で取り除かれるのでご安心ください。有害な病原体もほとんどのケースで問題なく分解されることが確認されているので、安全な堆肥として使うことができます。

ヒューマンコンポスティングで有機還元された遺体は、およそ0.76立方メートルの堆肥に生まれかわります
遺族は堆肥を持ち帰るか、または、森や緑化団体に寄付することができるということです。

ヒューマンコンポスティングの特徴
・専用の容器で自然有機分解を行う
・バクテリアや菌類の働きで遺体を分解する
・およそ6~8週間ですべて堆肥になる

ヒューマンコンポスティングの歴史

2019年4月、アメリカのワシントン州で「SB5001(人間の遺体に関する法案)」という新たな法案が可決されました。

その内容は、遺体を処理するプロセスについて、 有機還元・加水分解という2つの方法を認めるというものです。

アメリカでは土葬が一般的に行われているイメージがありますが、近年、火葬をして遺骨だけを埋葬するケースが増えています。埋葬のための土地が不足していることが、その理由です。
しかし、火葬には膨大なエネルギー消費が必要なうえ、大量の二酸化炭素を排出するという大きなデメリットがありました。

そこで、遺体を遺骨にするための、より自然に優しく、効果的な方法として、「有機還元・加水分解」という2つの遺体処理方法が認可されたというわけです。

① 有機還元(ヒューマンコンポスティング)
 ⇒微生物の力で遺体を分解し堆肥にする
②アルカリ加水分解
 ⇒遺体をアルカリ性の溶液で分解し液体化する

参照:SB 5001 – 2019-20(Concerning human remains.)

ヒューマンコンポスティングのメリット

森の画像

有機還元葬を行うメリットとしては、まず、遺体を火葬するよりもエネルギー消量をおよそ1/8におさえられるという点があげられます。

実は、人間一人分の遺体を完全に燃やすためには、大量のガソリンを必要とし、大量のCO2を排出しているのです。
有機還元葬を選ぶことでエネルギー消費量を減らし、CO2排出量を大幅に減らすことができます。

また、ヒューマンコンポスティングでは埋葬をしないので、お墓のための広い土地を用意する必要がありません

さらに、土葬や火葬よりも、埋葬のための費用を安くおさえることができる点も大きなメリットです。
土葬するための広い土地を買う費用、棺桶代、エンバーミング処理費用、高額な埋葬費用もいらないので、埋葬のために高額な費用を払う必要がありません。

ヒューマンコンポスティングは、地球環境に対してだけでなく、残された遺族にとっても優しい埋葬方法だと言えるでしょう。

<メリット>
・エネルギー消費が少ない
・CO2排出量をおさえられる
・埋葬のための土地が要らない
・埋葬費用が安い

ヒューマンコンポスティングのデメリット

多くのメリットのあるヒューマンコンポスティングですが、残念ながら、日本では行うことができません。
アメリカでも、認可されているのはワシントン州を含むいくつかの州だけです。

また、ヒューマンコンポスティングを行うためには専用の施設が必要とされますが、アメリカ国内にも、まだ十分な数の施設はありません。

従って、環境がまだ十分に整っていないという点が、ヒューマンコンポスティングのデメリットと言えるでしょう。

<デメリット>
・利用可能な施設がまだ少ない
・日本では認められていない

まとめ

アメリカで新たにスタートした、注目のエコな埋葬方法「ヒューマンコンポスティング(有機還元葬)」についてご紹介しました。
埋葬の選択肢の一つとして、今後、アメリカ社会にどの程度定着していくか気になりますね。

日本でもヒューマンコンポスティングによる埋葬が行われる日が、近い将来やって来るかもしれません。

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