アクアメーション(アルカリ加水分解)は、遺体を骨にするための技術です。
地球にやさしい埋葬(グリーン埋葬)の一つとして注目を集めています。
といっても、これはアメリカの一部の州での話。
アクアメーションは、現在、アメリカの複数の州で認可され、その他の州でも実現が待たれている状態です。残念ながら、日本ではまだ認可されていません。
アクアメーションとは一体どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
アクアメーションの呼び方についての基礎知識
・アクアメーション(Aquamation)
・アルカリ加水分解(Alkaline Hydrolysis)
・エコ火葬(Eco-friendly Cremation)
・液体火葬(Liquid Cremation/Water Cremation)
・無炎火葬(Flameless Cremation)
・レソメーション(Resomation)
・水葬(Water Cremation)
アクアメーションは、アルカリ性の水溶液で遺体を溶かして分解することから、アルカリ加水分解と呼ばれます。
あるいは、エコ火葬、液体火葬、無炎火葬などと呼ばれることもあるようです。とてもエコな、液体を使った、燃やさない火葬。といったところでしょうか。
アクアメーションでは遺体を燃やすわけではないので、厳密に言えば「火葬」ではありませんが、火葬の代替手段と考えられているため、火葬という名前で呼ばれているようです。
その他、生物学的火葬という意味で、レソメーション、または、単に「水葬」と呼ばれることもあるようです。
アクアメーションの歴史
アクアメーションによる遺体処理の歴史は意外と古く、アメリカで130年以上の歴史があります。
130年前というと、日本ではまだ土葬が行われていた時代ですね。かなり古い時代から、液体による遺体処理のが研究されていたことがわかります。
アメリカでは土葬が一般的と思われがちですが、実は、お墓の用地不足の問題や、土葬による土壌汚染の問題から、遺骨だけを埋葬するケースが増えています。
しかし火葬で遺体を骨にするには、膨大なエネルギー消費と二酸化炭素の排出という問題がありました。そこで、遺体を骨にする新たな手段として考え出されたのがアクアメーションです。
アルカリ加水分解による遺体処理の技術は、1888年にアメリカで特許として認められました。その後、さらに研究が進み、主にペットの遺体を処理する方法として用いられるようになりました。
そして2003年、アメリカのミネソタ州で認可され、アルカリ加水分解で人間の遺体を処理することが可能になったのです。
現在では、アメリカの18の州でアルカリ加水分解による遺体処理が可能になり、さらに複数の州での認可が検討されています。
全米で最も優れた医療研究機関のひとつとして知られるメイヨークリニックでは、ミネソタ州保健局の認可を受けた火葬施設を設置。全身ドナーの提供者に、アクアメーションのサービスを無償で提供しています。
アクアメーションの仕組み
アクアメーションを行うと、アルカリ性の水溶液で満たされた専用の装置の中で、遺体は溶けて骨だけの状態になります。
装置に入っているのは、約300リットルのアルカリ性の水溶液(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)です。そこに、およそ150度の熱と圧力をかけることで、遺体のタンパク質や血液、脂肪などの有機物を分解。後には、粉末状の骨と金属(歯の詰め物など)、茶色の液体だけが残るという仕組みです。
装置の種類などによって多少異なりますが、遺体が分解されるまでにかかる時間は、およそ1時間から数時間。もう少し長くかかる場合もあります。
アクアメーションでは、自然の環境の中で長い時間をかけて遺体が腐敗し分解されるのと同じプロセスを、わずか数時間という超高速で実現することを可能にしています。
また、高温で処理することで体内の微生物や毒素も分解されるので、アクアメーションを行ったあとに残るアミノ酸などを含む液体、そして粉末状の骨は、肥料として使うことが可能です。
アクアメーションを選ぶメリット
環境への負荷が非常に少ないという点が、アクアメーションの大きなメリットです。
アクアメーションを火葬と比較した場合、遺体を骨にするためのエネルギー消費を8分の1~10分の1に抑えることができます。また、二酸化炭素の排出を約4分の1に抑えることができます。
また、150度という高温で処理を行うことで体内の微生物や毒素が分解されるため、処理後に残った骨や液体を肥料として使うことができるのです。
アクアメーションを行うための費用は、およそ1000ドル~2000ドル程度。火葬の場合よりも少ない費用で遺体を処理することができます。
アクアメーションのデメリット
アクアメーションのデメリットは、それほど多くありません。
デメリットの一つは、そもそもアクアメーションを利用できる施設が少なく、実現可能な地域が限られているという点です。
現在のところ、アクアメーションによる遺体の処理は、アメリカを含めた世界のわずかな国でしか認められていません。もちろん、日本でアクアメーションを行うことはできません。
しかし、今後アクアメーションの技術がさらに向上し世界に広がっていくことで、このデメリットは解決されるでしょう。
もう一つのデメリットとしては、アクアメーションの認知度がまだ十分でないことがあげられます。
アルカリ加水分解による遺体処理に対してあまり良い印象を持っていない人からは、アクアメーションを選ぶことを受け入れてもらえないケースがあるかもしれません。
まとめ
クリーンでエコな埋葬方法、アルカリ加水分解による遺体処理(アクアメーション)についてご紹介しました。
アクアメーションのほか、キノコ葬、堆肥葬、樹木葬など、地球環境に配慮した埋葬方法のことを、グリーン埋葬(Green Burial)といいます。日本でも、墓じまいをして樹木葬や散骨、永代供養の共同墓地を選ぶケースが増えてきていますが、世界の多くの地域でグリーン埋葬への注目度が高まってきているようです。
近い将来、アクアメーションによる遺体処理が日本でも行われるようになるかもしれませんね。