生前整理の一環として、ぜひやっておくべき作業があります。それは、デジタル遺品の整理です。
例えば、あなたのスマホやパソコンに、次のような情報が保存されていませんか?
・家族の電話番号
・メールアドレス
・顔がはっきりとわかる写真
・SNSのIDとパスワード
・クレジットカードの番号
・ネットバンクのIDとパスワード
もし、明日あなたに万が一のことがあったとしたら、スマホやパソコンに残されるこれらの情報はどうなるでしょう?
大切な写真が気づかれないまま処分され、個人情報が保存されたままスマホが売られてしまうかもしれません。
そのような危険な事態を避けるにはどうすればよいのでしょうか?
デジタル遺品の基礎知識、生前整理でやるべき理由、具体的な作業手順について見ていきましょう!
デジタル遺品とは電子機器に保存された個人情報
デジタル遺品とは、パソコン、スマホ、携帯電話、デジカメ、スマートウォッチなど、さまざまな電子機器に保存されている個人情報のこと。
例えば、今あなたが使っているスマホには、こんな情報がたくさん入っていませんか?
- 家族・親戚・友達の個人情報
- 電話番号
- メールアドレス
- LINEのID
- フルネーム
- 顔がはっきりと写った写真 など
あなたのパソコンやタブレットも同様です。
- ネットで契約した有料サービス
- ネットバンクログインIDとパスワード
- ネット通販の履歴
- 利用したクレジットカード情報
- 作成したさまざまなドキュメント
- ダウンロードした資料
- 過去にやりとりしたメールの履歴 など
このような個人情報は、これらが保存されている電子機器の持ち主が亡くなったあと「デジタル遺品」として残ります。
管理されないデジタル遺品が流出、あるいは知らずに破棄されてしまうことによるトラブルが、近年大きな問題となっているのです。
デジタル遺品を放置することによるトラブル
デジタル遺品を整理しないままスマホやパソコンなどを放置することによる問題点は、大きく3つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 重要な情報が気づかれずに破棄される
- 個人情報が他人に知られる危険がある
- 持ち主以外が整理することが困難
重要な情報が気づかれずに破棄される
あなたのスマホやパソコンにどれほど重要な情報が保存されているか、あなた以外の人は誰も知りません。
もし、中身を確認することもなく遺品をすべて廃棄処分されてしまったら、スマホやパソコンに保存された、お金に関する情報、重要なWebサイトのURL、IDとパスワード、価値のあるドキュメント、写真、動画など、貴重な情報が誰にも気づかれないまま消えてなくなってしまいます。
そうならないためには、どこにどのような重要な情報が保存されているかを、事前に誰かに伝えておく必要があります。
個人情報が他人に知られる危険がある
遺品として残された高価なパソコンやスマホが、中古品として売られるケースは少なくありません。
その際、データの削除や初期化といった作業をしっかりおこなっていなければ、保存されていた個人情報がそのまま他人の手に渡ってしまう危険があります。持ち主だけでなく、家族や友人知人の電話番号やメールアドレス、場合によってはクレジットカードのデータなども流出してしまう可能性があるため、とても危険です。
自分に万が一のことがあった場合に備えて、信頼できる人に、スマホやパソコンの処分を頼んでおくことをおすすめします。
持ち主以外が整理することが困難
スマホやパソコンなどの電子機器が遺品として残された場合、遺族や、遺品整理を任された人がデジタル遺品を整理することになります。
しかし多くの場合、IDやパスワードがわからないためログイン(サインイン)することができません。そのようなデジタル遺品は、専門家にロック解除を依頼する必要があるため、1~数万円程度の費用がかかります。また、デジタル遺品から電子マネーや価値のあるものが見つかった場合は、相続の問題が発生する可能性があります。
スマホやパソコンなどの電子機器を、持ち主以外の人が整理するのはとても大変な作業なのです。事前に情報をわかりやすく整理し、万が一の事態に備えてメモなどを残しておく必要があります。
デジタル遺品を整理する8つのステップ
デジタル遺品の整理には、いくつかのステップがあります。
一度にすべて完了することは難しいので、優先順位の高いものからひとつずつ進めていきましょう。
【優先順位】 | 【作業ステップ】 |
高 | ① 必要なIDとパスワードをメモする ② 金融資産の口座情報・アカウント情報をメモする ③ 有料サービスのアカウント情報をメモする |
中 | ④ 不要なサービスを解約する ⑤ 使っているサイトのアカウント情報をメモする ⑥ 残したいデータを別の場所に保存する |
低 | ⑦ 見られては困るデータを削除する ⑧ 履歴を削除する |
① 必要なIDとパスワードをメモする
自分に万が一のことがあったとき、スマホ、パソコン、タブレットなどに残された個人情報や重要な情報が破棄されたり流出することを避けるには、信頼できる人に管理してもらう必要があります。
そのためには、自分以外の人がログイン(サインイン)できるように、IDとパスワードをメモして、安全な場所に保管しておくことが大切です。エンディングノートに記録する場合は、エンディングノートの保管場所に注意しましょう。
親族や後見人など、信頼できる人に直接伝えておく方法もおすすめです。
スマホやパソコンの個人情報や重要な情報を管理してもらうためにすべきこと
・IDとパスワードをメモして、安全な場所に保管する
・エンディングノートに記録して、安全な場所に保管する
・親族や後見人など、信頼できる人に伝えておく
② 金融資産の口座情報・アカウント情報をメモする
自分に万が一のことがあったとき、ネット銀行やネット証券など、ネット上の金融資産が、誰にも知られずに埋もれてしまう危険があります。そうならないためには、ネット銀行などのURL、アカウント情報をどこかにメモしておくことが大切です。
しかし、金融資産の口座情報やアカウント情報は、取り扱いに注意しなければなりません。
誰でも見れるような場所に保存しておくのは危険なので、親族や後見人など、信頼できる人に直接伝えておく方法がおすすめです。メモを残す場合は、厳重に管理される遺言書に書いておくと安心です。
ネット上の金融資産を守るためにすべきこと
・口座情報やアカウント情報を、信頼できる人に直接伝えておく
・厳重に管理される遺言書に書いておく
③ 有料サービスのアカウント情報をメモする
有料サービスを利用している場合、自分に万が一のことがあったときに、解約手続きをしてもらう必要があります。誰かに手続きをしてもらわない限り使用料の引き落としは止まらないので、使っていないサービスの使用料をずっと支払い続けることになってしまうからです。
お金を払って利用しているネットサービスについて、サイトのURL、IDとパスワードをメモして、安全な場所に保管しておきましょう。エンディングノートに記録しておくか、信頼できる人に伝えておく方法もおすすめです。
有料サービスを解約して支払いを止めてもらうためにすべきこと
・URL、ID、パスワードをメモして、安全な場所に保管する
・エンディングノートに記録して、安全な場所に保管する
・親族や後見人など、信頼できる人に伝えておく
④ 不要なサービスを解約する
ゲームや通販、お気に入りのブランドといったサイトで会員登録をしている場合は、使っていないサービスを解約して、整理しておきましょう。
特に、気軽に会員登録できる無料のサービスは数が増えてしまいがちなので、必要なものだけを残して整理しておくことをおすすめします。名前や住所、電話番号を登録しているサイト、クレジットカード情報を保存しているサイトなどは、使っていなければ早めに解約しておくと安心です。
⑤ 使っているサービスのアカウント情報をメモする
お気に入りの通販サイトやSNSなど、普段から使っているサービスについては、サイトのURLやアカウント情報をできるだけメモしておきましょう。
自分に万が一のことがあった場合に、そのまま残しておくこともできるのですが、プライバシーに関する情報や個人情報、ショッピング履歴などが漏れてしまう可能性があるので、遺族や信頼できる人にアカウント情報を伝えて、削除してもらえるように頼んでおくことをおすすめします。
⑥ 残したいデータを別の場所に保存する
写真や動画、音楽。自作の画像や文書など、大切なデータは、スマホやパソコン以外の場所に保存しておくと安心です。
USBメモリやSDカード、CDなら、コンパクトで保管しやすいというメリットがあり、他のパソコンで管理することもできるのでおすすめです。
⑦ 見られては困るデータを削除する
スマホやパソコン、ネット上に保存されている、他の人には見られたくないデータは、事前に削除しておきましょう。
画像や動画、メールのメッセージ、SNSやブログの投稿など、さまざまな種類のデータが残されているので、時間のあるときに整理して不要なものは削除しておくと安心です。
また、仕事の資料や作品など、守秘義務のあるデータについては特に注意が必要です。早めに削除しておきましょう。
⑧ 履歴を削除する
インターネットを利用していると、ショッピング履歴やネットの検索履歴などがパソコンやスマホに保存されます。
気になる場合は、普段からこまめに履歴を削除しておきましょう。
迷うときはプロに相談
パソコンやスマホなど、デジタル機器のデータを整理する方法についてご紹介しましたが、操作に不慣れな場合は、無理に自己流で作業をすることはおすすめしません。
データの保存や削除といった作業を専門に行っている業者がたくさんあるので、無理せず、専門業者に相談しましょう。
身近に頼める人がいる場合は、家族や知り合いに作業をサポートしてもらう方法がおすすめです。
まとめ
スマホやパソコンの保有率は、すでに9割を超えていると言われています。デジタル遺品の問題は、今後、生前整理や遺品整理においてさらに重要な課題となっていくでしょう。
生前整理のタイミングで、デジタル遺品になってしまいそうな情報を整理しておくと安心です。