遺留分を請求する方法|話し合い~訴訟まで、状況に応じて使い分けが必要

お金と話し合う人の画像

遺留分の請求は、条件によっては、当事者同士の話し合いで解決が可能です。

遺産を相続した人と直接話をして、要求を受け入れてもらえれば、当事者同士の話し合いだけで遺留分請求を終えることができるというわけです。
また、遺産の総額がはっきりしていれば、遺留分がいくらになるのかについても簡単に計算することができます。

このような状況であれば、わざわざ専門家の手を借りる必要もありませんね。
しかし、現実はそう簡単にはいきません。

場合によってはかなり高額な請求になりますので、必ずしも要求を受け入れてもらえるとは限りません。
そもそも、相続人と話し合うことさえ難しいケースもあります。相続人が複数いる場合は、話し合いはさらに複雑です。
また、遺産が現金だけでなく家や土地を含む場合、遺留分の計算はとても難しくなります。
生前贈与が絡んでくると、さらにやっかいです。

当事者同士の話し合いだけでは決着がつかず、家庭裁判所での調停、あるいは、訴訟を起こして裁判で解決するといったケースもあります。
このような状況になってくると、専門家の手を借りなければ解決は難しいでしょう。

ですので、遺留分の請求は、状況によっては非常に手間がかかり、自力での解決は難しい場合があるということを理解しておく必要があります。

今回は、状況によって異なる、遺留分請求の方法について詳しく見ていきましょう。

目次

遺留分を請求する方法は3つ

遺留分を請求する方法は、主に次の3つです。

① 当事者同士で話し合う(弁護士が入る場合を含む)
② 調停で話し合う(家庭裁判所)
訴訟を起こして裁判で解決する(裁判所)

①だけで解決する場合もあれば、いきなり②または③の方法に進むこともあります。
または、状況に応じて①~③の手順を進めていくケースなど、遺留分請求の方法は状況に応じて様々です。

それぞれの方法について説明します。

① 当事者同士で話し合う

遺留分請求の最もシンプルな方法は、遺留分を請求する人と遺産を相続した人が、直接話し合って決めることです。
具体的には、遺留分の請求者が、遺産の相続人にお金の支払いを要求するという手続きになります。

この場合、金額等についてお互いが納得し、受け渡しが完了すればOK。
ややこしい手続きは必要ありません。

ただし、口頭での話し合いだけで終わらせるのではなく、署名・捺印をした合意書を作成しておくことが大切です。
合意書の作成は必須ではありませんが、トラブルを避けるためにも作成しておくことをおすすめします。

当事者だけで話し合って終わらせることもできますが、弁護士などの専門家に依頼して、関係者との連絡や合意書作成などの手続きを行うケースが多いようです。

遺留分を受け取ったあとは、相続税を納める手続きが必要です

② 調停で話し合う

当事者同士(遺産の相続人と遺留分の請求者)では話し合いがまとまらない場合、第三者に間に入ってもらって話し合いを進める方法がとられます。
つまり、家庭裁判所で調停を行うということです。

調停委員が間に入り、遺留分請求を解決できるようサポートしてくれます。
裁判ではないので、どちらが正しいかを決めるのではなく、できるだけ双方が合意して解決できるように話し合いを進めてくれるので、円満な解決を目指せる点が調停を行う大きなメリットです。

お金がかかりますが、裁判よりは安く収めることができ、弁護士などの専門家に依頼せずに個人で申し立てを行うことも可能です。

出典:COURTS IN JAPAN|遺留分侵害額の請求調停

調停は、民間のさまざまなトラブルを解決するための手段です

訴訟を起こして裁判で解決する

調停でも遺留分についての話し合いがまとまらない場合の最終手段として、訴訟を起こし、裁判で解決する方法があります。
裁判は、調停の場合と比べると、最終的に必ず決着をつけることができるという点がメリットです。

ただし、より多くの費用と時間がかかることを覚悟しておかなければなりません。
弁護士に依頼するケースがほとんどなので、裁判費用のほかに弁護士費用も必要になります。

裁判で解決する場合、白黒はっきりさせることで、お互いの関係が悪くなってしまう可能性があることを理解しておきましょう。

裁判官が和解案を提示し、より円満に解決できる場合もあります

遺留分請求の前に情報収集が大事

遺留分を請求する方法をご紹介しましたが、実際に遺留分請求を行うためには、事前にやらなければならないことがあります。
それは、相続についての情報を集めることです。

・誰が遺産を相続したのか
・遺産の内訳と総額

・生前贈与はないかどうか

このような情報をしっかり確認し、請求できる遺留分の額を把握したうえで「遺留分請求」の具体的な手続きにのぞみましょう。
誰と話しをするべきかを確認することも大事なポイントです。

財産の計算が難しい場合は専門家に任せる

遺族が請求できる遺留分の割合は法律で明確に決められていますが、実際の遺留分の計算は、場合によってはかなり難しいということを知っておきましょう。

遺産は現金だけとは限りません。
不動産、株などの有価証券、芸術品や骨とう品、貴金属など、さまざまなかたちで残された遺産の価値をそれぞれ正しく計算するのは、素人には困難です。不動産の場合は、公示価格や評価額といった計算も必要になってきます。
また、生前贈与があった場合はその金額を差し引かなければなりません。

さらに、訴訟や裁判で、遺留分の請求額が正しいものであることを証明するとなると、もはや素人の手には負えません。

財産の計算が難しそうな場合は、弁護士や税理士、司法書士といった専門家に依頼することをおすすめします。

話し合いが困難な場合は専門家に間に入ってもらう

遺留分を請求するには、相続人と話し合いをする必要があります。

普段からコミュニケーションをとっている間柄であれば話し合いをスムーズに進めることができそうですが、そうでない場合は、コンタクトをとることさえ難しいというケースも少なくありません。
話し合いを拒否される場合もあるでしょう。

そのような場合は、専門家に間に入ってもらうことで、話し合いを進めることができます。

具体的な方法としては、弁護士などの専門家に間に入ってもらう。または、訴訟を起こして家庭裁判所の調停員に話し合いを進めてもらうというやり方があります。

話し合いが長引いて、遺留分請求の期限が過ぎてしまっては困りますよね。
自力での解決が難しそうな場合は、できるだけ早く専門家に相談して、話し合いをスムーズ進められるようにすることが大切です。

まとめ

遺留分請求の方法と、事前にすべきことについてご紹介しました。

遺留分請求を実現するためには、このほかにも知っておくべきことがたくさんあります。
遺留分請求に関するこちらの記事もぜひご覧ください。

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