遺言書を書いたら、どこに保管しますか?
・自宅の金庫
・銀行の貸金庫
・書斎のデスクの引き出し
・仏壇の中
・信頼できる人に預ける
・弁護士に預ける
いろいろな保管場所が考えられますが、安全で確実な保管場所って、なかなか難しいですよね。
遺言書は、他の誰かに見られないように保管しておかなければならないので、困ってしまいます。
わかりにくい場所に隠してしまうと、自分も遺言書の存在を忘れてしまうかもしれませんし、いざという時に見つけてもらえない危険があります。
遺言書の理想的な保管場所
「こんな場所って、ある?」
・誰かに見られる心配がない
・長期間保管できる
・確実に保管できる
・いざという時に遺族に見てもらえる
このような理想的な保管場所が、どこにあるのでしょうか?
その答えが、2022年に始まった「自筆証書遺言書保管制度」です。
新しくスタートした、大切な遺言書を安全に保管するための制度について詳しく見ていきましょう!
自筆証書遺言書保管制度の概要
自筆証書遺言書保管制度とは、自分で書いた遺言書を、法務局で預かって保管してくれる制度
自筆証書遺言書保管制度は、「じひつしょうしょ いごんしょ ほかんせいど」と読みます。
民法が改正され、2022年に新しく始まったばかりの制度です。
この制度を利用すると、自分で書いた遺言書を法務局で預かって、しっかりと保管してくれるのだそうです。
とても助かりますね!
ただし、預かってもらえる遺言書は、「自筆証書遺言」に限られます。
自筆証書遺言とは、遺産を残す人が自分で書いてハンコを押し、自分で保管する遺言書のこと
遺言書にはいくつかの種類があるのですが、中でも、自分で書いて自分で保管する「自筆証書遺言」は、お金もかからず最も手軽な作成方法なのです。
しかし、自宅保管する場合、紛失してしまったり、いざという時に発見されない危険があります。
また、自分一人で作成できるため、遺言書の要件形式を満たしていないケースがあり、問題となっていました。
せっかく書いた遺言書が、いざという時に効力を発揮することができないのでは困ってしまいますよね。
この問題を解決すべく、新たに制定されたのが、遺言書を行政で預かって、必要なときまで保管するという制度「自筆証書遺言書保管制度」なのです。
もっと詳しく知りたい方は、こちらの動画がおすすめ!
政府広報動画「あなたの最後の手紙を守ります~自筆証書遺言書保管制度」
自筆証書遺言書保管制度のしくみ
自分で書いた遺言書は、一体どこでどのように預かってもらえるのでしょうか?
遺言書の保管場所
まず、遺言書を保管する場所は、各地域の「法務局」になります。
その中の「遺言書保管所」と呼ばれる場所に保管されます。
遺言書の保管を申請するためには、お住まいの地域を担当する法務局の本局(または支局)に直接持っていく必要があるという点に注意が必要です。
お住まいの地域(住民票がある場所)を担当する法務局のほか、戸籍のある場所を担当する法務局、所有する土地を担当する法務局のいずれかを利用することも可能です。
遺言書の保管方法
法務局では、預かった遺言書をデータ化し、原本と画像データという2つの方法で保管してくれます。
ちなみに、遺言書の原本は、作成した方が亡くなった日から50年間、画像データ150年間保管されるという決まりになっています。すごいですね!
【保管場所】
・住民票がある場所を担当する法務局
・戸籍のある場所を担当する法務局
・所有する土地を担当する法務局
【保管方法】
・遺言書の現物を保管
・遺言書をデータ化して保管
自筆証書遺言書保管制度の手続き
この制度で行われる手続きは、大きく3つのステップに分かれています。
遺言書を作成した人、つまり遺産を残す人が、法務局に保管を申請するステップと、申請後に閲覧や撤回をするステップ。
そして、遺言書を作成した人の死後、相続人や関係者が、保管されている遺言書の閲覧を請求するステップです。
① 【遺産を残す人】遺言書保管を申請
② 【遺産を残す人】閲覧/撤回/変更
③ 【遺産を相続する人】遺言書閲覧など
それでは、それぞれのステップについて、具体的な手続きを見ていきましょう。
【遺産を残す人】遺言書を作成して保管を申請する
①ルールに沿って遺言書を作成する
②保管する法務局を決める
③予約をする
④申請書を作成する
⑤保管を申請する
自筆証書遺言の様式に沿って、自分で遺言書を作成したら、保管を依頼する法務局を決めて申請の予約をします。
申請時に、様式(正しいフォーマットで書かれているか)のチェックを行い、問題なければ申請が完了します。
利用手数料は、遺言書1通につき 3,900円です。
【遺産を残す人】遺言書の閲覧/撤回/変更
①遺言書の閲覧
②遺言書の保管の撤回
③遺言書の変更
遺言書の保管申請後、保管している遺言書の閲覧、撤回、変更手続きをすることができます。
ちなみに、本人(遺言書の作成者)が生きている間、遺言書を閲覧できるのは本人だけです。これは、当然ですね!
遺言書原本の閲覧は、保管してある法務局で行う必要がありますが、モニターの閲覧は、全国の法務局で利用可能です。
▶遺言書の原本閲覧手数料:
1回につき 1,700円
▶遺言書のモニター(画像データ)閲覧手数料:
1回につき 1,400円
預けた遺言書の変更、撤回については、手数料はかかりません。
【遺産を相続する人】遺言書の閲覧などを請求する
① 遺言書の閲覧(モニター/原本)
② 遺言書保管事実証明書の交付
③ 遺言書情報証明書の交付
遺産相続の関係者は、遺言書を作成した方が亡くなったあと、遺言書を閲覧することができます。
誰でも閲覧できるわけではありませんのでご注意ください。
遺言書原本の閲覧は、保管してある法務局で行う必要がありますが、モニターの閲覧は、全国の法務局で利用可能です。
▶遺言書の原本閲覧手数料:
1回につき 1,700円
▶遺言書のモニター(画像データ)閲覧手数料:
1回につき 1,400円
このほか、必要に応じて、遺言書の存在確認や、相続の手続きに使用するための証明書を請求することができます。
まとめ
自分で書いた遺言書を、行政が確実に保管し、必要に応じて閲覧などへの対応を行ってくれる、自筆証書遺言書保管制度をご紹介しました。
円満で円滑な相続のためには、遺言書を残すことが効果的です。
残される家族が安心して過ごせるよう、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。