遺言書の読み方は「ゆいごんしょ」・「いごんしょ」どちらでしょう?
遺言書について知るためには、まず最初に、正しい読み方を確認しておかなければなりません。
漢字表記の「遺言書」には、実は、「ゆいごんしょ」「いごんしょ」という2種類の読み方があるのです。
・遺言書(ゆいごんしょ)
・遺言書(いごんしょ)
遺言書の2つの読み方は、それぞれ意味が違います。
「ゆいごんしょ」と読む場合、残された家族などに遺す言葉という意味を表し、「いごんしょ」という場合は、遺産相続について書かれた文書という意味になります。
次のようなイメージです。
ゆいごんしょ:家族仲良く、母さんをよろしく
いごんしょ:A男に1,000万円、B男に1,000万円
いかがでしょう?
同じ漢字ですが、読み方の違いで内容がずいぶん違ってしまうのですね。
というのが、本来の用法なのですが。
実は現在では、どちらも場合も「ゆいごんしょ」と呼ぶケースが増えてきています。
ですので、遺産相続に関する遺言書を「ゆいごんしょ」と呼んでも間違いではありません。言葉の使い方は時代とともに変わっていくのですね。
家族に遺す言葉と、遺産相続に関する文書をはっきりと使い分けたいときには、読み方を変えるとよいかもしれませんね。
それでは、遺言書(いごんしょ)に関する基本的なルールを確認していきましょう!
遺言書(いごんしょ)の書き方は法律で決まっている
相続の際に必要とされる遺言書(いごんしょ)の書き方は、民法という法律で決められています。
「昔からなんとなく決まっている」のではなく、法律でしっかりと定められている点に注意が必要です。
遺言書は、法律に定められたルールに則って書かれていなければ、正式なものとして認めてもらえません。
封筒の表に「遺言書」と書いてあったとしても、間違いなく本人の筆跡で書かれていても、正しいルールで書かれていなければ、正式な遺言書ではないのです。
何のルールもなく、誰がどのように書いてもOKなら、簡単に遺言書を偽造できてしまいますからね!
遺言に関するルールは、民法第五編「相続」第七章「遺言」に書かれています。
法務省の法令検索サイト「e-Gov(イーガブ)」から見ることができますので、興味のある方はチェックしてみてください。
ちなみに、遺産相続に関係なく、残された家族に伝えたいメッセージを書く「遺言書(ゆいごんしょ)」には、もちろん、書き方のルールなどはありません!
正式な遺言書が必要になるケースとは?
ところで、遺言書が正式なものでなかったら、どのような問題があるのでしょうか?
正式な遺言書が残されていなかったら、どうなってしまうのでしょう?
実は、遺産を受け取る権利のある人達が納得しているのであれば、遺言書が正式なものでなくても構いませんし、遺言書がなくても、遺産相続を滞りなく行うことができるのです。
そもそも、すべての人が遺言書を遺しているわけではありませんからね。
では、どのようなときに、法律に則った正式な遺言書が必要になるのでしょうか?
それは、遺産を相続する人、つまり、遺産を相続する権利を持つ人(法定相続人)が2人以上存在する場合。そして、遺産の相続方法が簡単に決められない場合です。
もし、遺産を相続する人が一人しかいなければ、遺産相続に関する争いは起きません。
しかし複数で遺産を分けるとなると、たとえそれが、兄弟であっても、親と子であっても、どんなに仲の良い家族だったとしても、円満に相続を終えることはなかなか難しいのです。そのため、遺産をどのように分けるかを話し合う(遺産分割協議をする)必要があります。
相続人が揉めることなく遺産を分けられるように、また、本当に必要としている人に遺産を残すようにするために、正しいルールで書かれた遺言書が必要になるのです。
正式な遺言書の種類は主に3種類、全部で7種類
では、正式な遺言書(いごんしょ)とはどのようなものなのでしょうか?
まず、遺言書の正式な作成方法にはいくつかの種類があり、全体としては、「普通方式」と「特別方式」とにわかれます。
特別方式は、緊急時や災害時にのみ適用されるものなので、一般的には、普通方式の遺言書を作成することになります。
ちなみに、普通方式の遺言書には3種類の作成方法、特別方式の遺言書には状況に応じた4種類の作成方法があるので、遺言書の方式は合計7種類です。
一般的に用いられるのは、普通方式の3種類の遺言書のうちいずれか。と、覚えておきましょう。
・普通方式(一般的な遺言書)
・特別方式(緊急時や災害時のみ適用される)
普通方式の3種類の遺言書とは?
一般的に用いられる遺言書は、「普通方式」と呼ばれます。
普通方式の遺言書には3種類の作成方法があり、どれを選んでもOKです。
3種類の作成方法には、それぞれ次のような違いがあるので、自分のニーズに合った方法を選びましょう。
・自分で作成 or 専門家が作成
・手書きが必須 or 印刷可
・自分で保管 or 専門の場所で保管
・証人が必要 or 不要
・有料 or 無料
・作成時に検認 or 相続時に検認
・内容は秘密 or 確認してもらう
・遺書の存在を公開 or 非公開
▶ 普通方式の遺言書
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
普通方式の3つの種類の遺言書について、それぞれ見ていきましょう。
①自筆証書遺言
「自筆」という名前の通り、自分で手書きで作成する遺言書です。
財産目録など一部を除き、すべて自身の手書きでなければいけません。自分一人で作成し、自分で保管する方法が一般的ですが、遺言書保管所に預けることもできます。
手軽に作成でき、お金がかからないというメリットがありますが、自分で作成するため、内容に不備がある場合は無効になってしまうケースもあります。また、自分で保管する場合は、紛失や、発見されない危険がある点に注意が必要です。
②公正証書遺言
法務大臣に任命された公証人と呼ばれる専門家に、正しい書式で遺言書を作成し、保管してもらう方法です。
遺言書を作成する最も確実な方法ですが、作成に立ち会ってもらう証人を用意する必要があり、また、費用がかかるというデメリットがあります。
作成された遺言書は公証役場で保管されるので安全性が高く、いざという時に発見されなかったり、紛失する心配がありません。また、内容の不備を理由に無効になるような問題がありません。
③秘密証書遺言
自分で作成した遺言書を、署名押印して封印し、公証人に遺言書として申請する方法です。
遺言書の内容は誰にも秘密のまま、遺言書が存在することだけを申告するという、ちょっと変わった方法です。
手書きである必要はなく、内容を誰かに見せる必要もありません。ただし、申請の際に証人が必要であり、自分で保管するため紛失の危険がある、内容に不備がある場合は無効になってしまう可能性があるといったデメリットがあります。
どの方法で遺言書を作成すべきか?
一般的に用いられる普通方式の遺言書には、3つの種類があり、どの方法を選んでもOKです。
もし、どの方法を選ぶべきか迷うなら、公正証書遺言をおすすめします。
他の2つの方法に比べて少しお金がかかりますが、正しい(無効とされる心配のない)遺言書を作成することができるという大きなメリットがあるからです。公証役場で遺言書を保管してもらえるので、紛失や盗難の心配がなく、いざという時にまちがいなく公開されるという安心感があります。
できるだけ費用を抑えて遺言書を作成したいなら自筆証書遺言が適していますが、正しい作成方法を自分で調べる必要あります。自筆証書遺言は自宅で自分で保管することもできますが、自筆遺言書補完制度を使うと安心です。
秘密証書遺言を作成するケースは、実際それほど多くありません。どうしてもこの方法を選びたい場合は、デメリットについてもしっかり比較検討することをおすすめします。
まとめ
遺言書に関する基本的なルールについて、見てきました。
「自分には関係ない!」と思っていた方も、遺言書を知ることで、少し身近に感じられるようになったのではないでしょうか。
今はまだ遺言書を作成するタイミングではないという方は、遺言書の種類を選ぶことから始めてみるとよいかもしれません。