終活では、遺産相続について考えておくことも大切!
なぜなら、お金や不動産など、相続のことをきちんとしておかなければ、残された家族が困ってしまうからです。
しかし、遺産相続のルールが難しすぎて、何をどうすればよいのかわからない! という方は、実際多いのではないでしょうか?
お抱えの弁護士がいるようなお金持ちや、気軽に相談できるお金や法律のプロの友達や親戚がいるわけでもない、ごく普通の者にとって、相続はまるで遠い世界の話。法律やルールがさっぱりわかりません!
そこで、遺産相続に関する初歩的な疑問について、考えてみたいと思います。
①どうして相続のルールはややこしいのか?
②遺産は誰がもらうのが正しい?
③遺産相続の手続きは誰がやる?
1)どうして相続のルールはややこしいのか?
法定相続人とか、遺産分割協議とか、遺留分侵害請求とか、基礎控除とか。
遺産相続には決まり事がたくさんあります。一体どうして、相続のルールはこんなにややこしいのでしょうか?
ルールがないと収集がつかなくなる
遺産を相続に関する法律がややこしいのは、ルールをきっちり決めておかないと、相続がもっとややこしくなるからです。
例えば、遺産相続には大金がからんでくるので、誰に権利があるかをはっきり決めておかなければ、遠い親戚やあらゆる人が遺産をもらおうと押しかけてくる可能性があります。そうなると収集がつかなくなってしまうので、法的に権利があるのは兄弟(または甥姪)までと決められているのです。
また、誰がどれだけ相続するかで揉めて、いつまでたっても決着をつけられないという事態もあり得ます。そのために、子どもが相続できる割合、子どもがいない場合に父母が相続できる割合などが法律で定められています。
細かな条件まできっちり決められているおかげで、揉めることなく、遺産相続を行うことができるのです。
ルールがないとズルをする人が出てくる
遺産相続では、細かいルールを法律で定めることで、卑怯なことができないような仕組みになっています。
例えば、全員揃わなければならないという遺産分割協議のルールがなければ、一部の相続人だけがこっそりと、自分たちの都合の良いように遺産相続を終わらせることができてしまいます。そうなると、自分だけが知らないうちに、遺産相続が全て終わっているといった事態になりかねません。
また、自分に都合の良い内容の遺言書を偽造する人が現れるかもしれません。だから、遺言書が正式に認められるためのルールが決まっており、財産を残す本人が書いたことを証明できるものでなければならないのです。
つまり、遺産相続のややこしいルールは、遺産を相続する人を守るためでもあるのです。
2)遺産は誰がもらうのが正しいのか?
誰が遺産を相続するかは、大きな問題です。遺産の額の大小にかかわらず。
少し前の時代は、長男あるいは家族の一人が全ての財産を相続するというケースが多かったため、揉めることはありませんでした。しかし、同じ家族、兄弟同士なのに、かたや広い土地や建物、財産を譲り受け、一方は何ももらえないというのは、酷なことです。どうしたって、不満や遺恨が残ります。
仲の良かった家族が、遺産相続をきっかけに仲たがいしてしまう。なんていう事態は避けたいですよね。
そもそも、遺産は誰が相続するのが正しいのでしょうか?
遺産は誰が相続してもOK
実は、誰が遺産を相続するかは、自由なのです。
遺産相続に、絶対こうしなければならないというルールがあるわけではありません。
配偶者でなくても、親族でなくても、赤の他人が相続することもできます。誰が何を、あるいはどれくらいの割合で相続するかも、自由に決めることができます。
遺産を相続する人を自由に決める方法が、遺言書を書くことです。
ルールに沿って正しく遺言書を作成すれば、遺産を残したいと思う相手に、間違いなく遺産を残すことができます。
遺族が決めることもできる
遺産を誰が相続するか、どのように分けるかが明確でないまま、亡くなってしまうケースもあります。
そのような場合、話し合って、誰がどのように遺産を相続するかを決めることができます。
これが、「法定相続人が集まって行う遺産分割協議」です。
遺産分割協議では、配偶者ほか遺産を相続する権利を持つ人が集まって、それぞれの事情に応じた遺産の分配方法を決めます。遺産分割協議で話し合って決めるのであれば、必ずしも、法律通りの分配方法である必要はありませんし、権利を持たない人に遺産を残すこともできます。
ただし、遺産分割協議には、法定相続人に相当する人が全員参加しなければならないというルールがあるので、注意が必要です。もし、一部の法定相続人だけで勝手に遺産を相続してしまったことがばれると、後からすべてやり直さなければならなくなります。
法定相続人とは何なのか?
法定相続人とは、法律上で決められた、故人の遺産を相続する権利を持つ人のことです。
ちなみに、必ずしも、法定相続人が遺産を相続しなければならないわけではありません。
法律上、遺産を相続する権利を持つ人が誰なのかを明確にしているだけなのです。
要は、遺言書もなく、遺産分割協議で揉めてしまったときのために、遺産を相続する人を法律で(一応)決めてくれているというわけですね。
法定相続人は誰がなる?
法定相続人となるのは、故人の配偶者と血縁者です。
つまり、定相続人になれるのは、亡くなった方自身の
・子、孫
・親、祖父母
・兄弟、甥姪
ということになります。
法定相続人になる人は、故人との血縁関係により順位が決まっていて、対象者がいない(または亡くなっている)場合に、次の順位の人に相続する権利が移動していきます。
ちなみに、配偶者は最も優先度が高く、常に最も多い割合を相続します。
<第1ステップ>
①故人の配偶者が、1/2を相続する
②故人の子が、1/2を分けて相続する
例)故人の子が3人なら1/6ずつ相続する
⇒故人の子が亡くなっている場合は、その人の子(故人の孫)が②の権利を引き継ぐ
⇒故人の配偶者がいない場合は、子(または孫)が全て相続する
⇒故人の子、孫がいない場合は、配偶者が全て相続する
故人の子も孫もいない場合、次のステップに進みます。
<第2ステップ>
①故人の配偶者が、2/3を相続する
②故人の親が、1/3を分けて相続する
⇒故人の親が亡くなっている場合は、その人の親(故人の祖父母)が②の権利を引き継ぐ
⇒故人の配偶者がいない場合は、親(または祖父母)が全て相続する
⇒故人の親、祖父母がいない場合は、配偶者が全て相続する
故人の親も祖父母もいない場合、次のステップに進みます。次が最後です。
<第3ステップ>
①故人の配偶者が、3/4を相続する
②故人の兄弟が、1/4を分けて相続する
⇒故人の兄弟が亡くなっている場合は、その人の子(故人の甥・姪)が②の権利を引き継ぐ
⇒故人の配偶者がいない場合は、兄弟(または甥・姪)が全て相続する
⇒故人の兄弟、甥姪がいない場合は、配偶者が全て相続する
出典:国税庁「タックスアンサー|No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
相続する人が誰もいない場合は?
では、遺言書がなく、法定相続人に該当する人が誰もいない場合、遺産はどうなってしまうのでしょうか?
法定相続人は、亡くなった方自身の「子・孫・親・祖父母・兄弟・甥姪」までと決まっています。
従って、遺言書もなく、これに該当する人が誰もいない場合、遺産はすべて国の財産となってしまうのです。
・・・とても残念ですよね。
しかし、ひとつ救いがあります。
それは、「特別縁故者」という存在です。
相続人が不明となってしまった遺産について、次の条件に該当する人がいれば、家庭裁判所に遺産相続の申し立てをすることができるのです。
例えば、身寄りのない方の身の回りの世話をずっと担っていた人などが、特別縁故者として認定されるケースがあります。
・故人と生計を同じくしていた者
・故人の療養看護に努めた者
・その他、故人と特別の縁故があった者
3)遺産相続の手続きは誰がやる?
ところで、誰かが亡くなった場合、誰がその人の遺産相続の手続きをするのでしょうか?
ドラマや小説の世界なら、弁護士が関係者一同を呼び集めて遺言書を開封したり、相続人を探し出してくれる場面を思い浮かべるところですが、現実の世界は違います。
我が家にはお抱え弁護士も、懇意にしている弁護士などいませんし、弁護士や司法書士、税理士といった資格を持っている親戚や知り合いもいません。
そのような場合どうすべきかというと、専門家(資格を持った人)にお金を払って依頼する、または自分で頑張る。ということになります。
専門家に依頼する場合
遺産相続の手続きを依頼する候補としては、次のいずれかが考えられます。
・弁護士
・司法書士
・行政書士
・税理士
・信託銀行
・銀行
誰に依頼するかは、遺産相続の現状(不動産があるかどうか、揉めているか、など)と、どれだけ費用をかけられるかによって決めましょう。
依頼する相手によって、対応可能・不可能な分野があります。また、費用もかなり異なります。
自分で遺産相続をする場合
実は、遺産相続に関する諸々の手続きは、特別な資格を持たない人がやってもOKです。
つまり、自分(たち)で遺産相続を済ませることも可能なのです。
遺産の内容が預貯金だけで、相続人がはっきりしているような場合なら、相続人にやる気があれば自力で手続きを済ませることができるでしょう。
しかし実際は、遺言を確認したり、不動産や貴重品などを含む財産を調査したり、相続人を調査して戸籍を取り寄せたり、遺産分割協議を取りまとめたり、相続放棄を希望する人の対応から、連絡がとれないケースや身元不明の相続人との連絡、生前贈与や遺贈された財産の確認など、相当な手間がかかることが予想されます。
相続人の一人が皆を代表して一手に引き受けるのは酷ですし、全員揃って動こうと思ったら、いつまでたっても相続を終えることはできないでしょう。
そもそも、相続の手続きは片手間では対応できるものではありませんし、はっきり言って、素人の手には負えません。
どうしても自力で遺産相続するというなら、よく状況を把握したうえで、相当な覚悟を持って臨む必要があるでしょう。
出典:政府広報オンライン|約40年ぶりに変わる“相続法”! 相続の何が、どう変わる?
まとめ
遺産相続に関する、超初歩的な疑問3点を見ていきました。
後回しにしてしまう人が多いようですが、遺産相続は終活でやっておくべきことの一つです。
事前にしっかりと相続の準備をしておくことで、無駄な争いを避け、残される遺族に辛い思いをさせずに済みます。