CO2排出を自分でまかなう「カーボンオフセット埋葬/葬儀」が地球の未来を救うかもしれない

新芽が育つ画像

気温の上昇。
異常気象。
頻発する自然災害。
生態系の変化。
干ばつ。
氷河の溶解による海面上昇。
未知のウィルスや病原菌が発生するリスク。

近年、私たちが暮らす地球環境は、温暖化による危機的な状況にさらされつつあります。
できるだけ早く何らかの手を打たなければ、私たちが安全に暮らせる環境を維持することは、あっという間に困難になってしまうでしょう。

今、私たちができるのは、温室効果ガスの元となるCO2の排出量と、植物が吸収するCO2の量を、バランスが取れている状態(カーボンニュートラル/Carbon Neutrality)にできる限り近づけること。

そのための有効な手段のひとつが、カーボンオフセット(Carbon Offset)です。

この記事では、オーストラリアで始まり、世界に広がりつつある「カーボンオフセット埋葬/カーボンオフセット葬儀」についてご紹介します。

目次

地球温暖化とはそもそも何なのか?

地球温暖化の画像

日常生活やさまざまな生産活動を通して、私たちは常に、大量のCO2(二酸化炭素)を排出しています。
排出されたCO2を植物が吸収し、光合成を通して酸素に還元することで、地球上の大気は安定した状態に保たれているのです。

しかし近代に入り、排出されるCO2の量があまりにも増えすぎて、植物が吸収しきれなくなってしまいました。これが、地球温暖化の原因だと考えられています。

地球温暖化の原因とされていますが、CO2などの温室効果ガスは、実は私たちが生きていくために必要な存在でもあります。なぜなら、宇宙空間は常に氷点下。人間が生きていくには寒すぎるのです。
もし温室効果ガスがなかったら、太陽から届く熱もあっという間に宇宙空間に逃げていってしまい、地球はマイナス何十度という極寒の星になってしまうでしょう。植物は育たず、ほとんどの人類は生きることができません。

温室効果ガスが地球全体をすっぽりと覆うことで、地上を適切な温度に保ってくれているのですね。

ところが近年、人間の生産活動により排出されるCO2の量が急増。植物に吸収されずに余ってしまうCO2の量が増えすぎたためにバランスが崩れ、地上の温度を適温に保つことが難しくなってしまったのです。

そして地上の温度が急上昇、地球温暖化という事態を招いてしまいました。

これが今まさに、私たちが直面している状況です。

カーボンオフセットとは排出したCO2を相殺すること

日常生活やさまざまな生産活動で排出されるCO2の量と、植物が吸収する量のバランスが取れている状態を、カーボンニュートラル(Carbon Neutral)といいます。
地球温暖化により地上の温度が上昇し、未来の地球環境が危なくなっている今、私たちがすべきことは、地球温暖化の原因であるCO2の量を減らし、カーボンニュートラルな状態にすること。そのための有効な手段のひとつが、カーボンオフセットです。

カーボンオフセットとは、自分たちが行った生産活動により排出されたCO2と同じ量を、別の方法で相殺する(埋め合わせする・帳尻を合わせる)ことを意味します。

カーボンオフセットを実現する2つの方法

カーボンオフセットには、主に2つの方法があります。

  1. 別の場所でのCO2の排出量を減らす
  2. 植物を植えてCO2の吸収量を増やす

①の方法では、自分たちの国や企業、コミュニティ内で排出量を減らす取り組みを行うほか、他の国などで実施されたCO2排出量削減に対してお金を払うことで、カーボンオフセットを実現したとみなすことができます。(売買されるCO2排出量をクレジットと呼びます)

②は、木を植えたり、森を整備することでCO2吸収量を増やす方法です。

カーボンオフセットは、今や地球全体の課題として、世界中でCO2の排出量を減らし、吸収量を増やす取り組みが行われています

【オーストラリア発】世界に広がるカーボンオフセットな埋葬

青空と木の画像

さて、そろそろ本題に入りましょう。

人間は生きている間CO2を排出し続けますが、亡くなったあとも、埋葬や葬儀を行うためにさらにCO2を排出します。

1回の火葬でおよそ150~200kg。さらに葬儀などを含めると、およそ300kg~1t近い量のCO2を排出していると言われています。土葬の場合も、エンバーミングや木製の棺桶の製造、コンクリートの墓石、長期的に墓地を管理することを考慮すると、火葬の場合以上の排出量があるとされています。

そこで考え出されたのが、埋葬をする際に1本の木を植えて、埋葬により排出されるCO2を相殺(カーボンオフセット)するという取り組みです。
始まりは2008年。オーストラリアのアデレードにある「センテニアル・パーク墓地(the Centennial Park cemetery)」が、埋葬や火葬のたびに1本の木を植えることを提案しました。

始まった当初、カーボンオフセット埋葬による効果は、地球全体の温暖化対策としてはわずかな量でしかなかったかもしれません。
しかし現在、カーボンオフセット埋葬という考え方は世界中に広がり、より多くの地域で、自分の埋葬をカーボンオフセットする取り組みが行われるようになっています。

日本でも実現可能なカーボンオフセット葬儀

自分の埋葬をカーボンオフセットする取り組みは、実は、日本でも幅広く行われています。

より具体的な方法としては、火葬や葬儀の際にCO2排出のクレジットを購入する。あるいは、実費を支払って植林や森の整備を行うという方法があります。
このようなサービスは「カーボンオフセット葬儀」と呼ばれ、多くの葬儀会社などで提供されています。

また、火葬の際に豪華な木製の棺桶ではなく、燃えやすい段ボールなどで作られたエコ棺を使用することでCO2排出量を減らす。あるいは、個別の墓地を作らず共同墓地を利用する、石や陶器の骨壺ではなく、土に還る素材でできた骨壺を利用するといった方法もあります。

近年、地球の豊かな自然環境を未来に残すためのカーボンオフセット埋葬/葬儀という考え方に、注目が集まっています。
近い将来、カーボンオフセット葬儀が社会の常識になる日が来るかもしれません。

自分の葬儀をカーボンオフセットする方法

・火葬や葬儀の際にCO2排出のクレジットを購入する
・火葬の際にお金を払って植林や森の整備を行う
・火葬の際にエコ棺を使用する
・共同墓地を利用する
・土に還る素材の骨壺を利用する

まとめ

オーストラリアで始まった、カーボンオフセット埋葬/葬儀についてご紹介しました。

地球温暖化のによる地球環境への影響をできる限り減らすためには、カーボンオフセットによる取り組みが欠かせません。
一人ひとりのカーボンオフセット埋葬/葬儀による効果はわずかな量でしかありませんが、より広く世界中で行われるようになれば、地球温暖化を食い止める大きな原動力となるでしょう。

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